整体院の客単価を上げるメニュー設計|コース・オプションの組み方と料金の並べ方
この記事の目次(9項目)
整体院の客単価は、施術の腕より先にメニュー設計で決まります。コースとオプションの組み方、料金の並べ方を、院長向けに数字を使って解説します。
- 客単価を「コース単価」と「オプション付帯率」に分けて考える計算式
- コースを松竹梅の3段階にすると真ん中が選ばれやすい理由と、研究データ
- 付けてもらいやすいオプションの価格・時間・数の目安
- 料金表を高い順に並べる、本命に印を付けるなど、並べ方のルール
- メニューを見直す5ステップと、総額表示・二重価格表示の注意点
客単価は「コース単価×オプション付帯率」で決まる
客単価を上げたいとき、多くの院長は基本料金の値上げを考えます。ただ、値上げは既存の患者さんの離脱につながりやすく、効果が出るまで時間がかかります。そこでまずは、客単価を次の2つに分けて考えます。
客単価 = 選ばれたコースの平均単価 +(オプション単価 × オプション付帯率)
たとえば60分6,000円のコースだけの院が、2,000円のオプションを用意し、3人に1人(付帯率30%)が付けるようになったとします。客単価は6,000円から6,600円になり、10%上がります。月の延べ来院数が200人なら、売上は月12万円、年間144万円増えます。基本料金は1円も上げていません。
もう一つの軸が「どのコースが選ばれるか」です。60分6,000円と90分8,500円の2つがある院で、90分を選ぶ人が20%から40%に増えると、平均のコース単価は6,500円から7,000円に上がります。メニュー設計は、この2つの数字を動かすための作業です。
選ばれ方を左右する3つの心理効果(研究データ)
料金表の見せ方で選ばれ方が変わることは、行動経済学の研究で繰り返し確かめられています。整体院のメニューに当てはめやすい3つを紹介します。
1. 選択肢は多すぎると選ばれない
コロンビア大学のアイエンガー氏とレッパー氏の実験(2000年)では、ジャムを24種類並べた売り場で買った人は3%、6種類のときは30%でした。種類が多いほど人は迷い、選ぶのをやめてしまいます。整体院でも、コースが7つも8つも並ぶ料金表は「どれを選べばいいかわからない」という不安を生みます。
2. 3つ並べると真ん中が選ばれやすい(妥協効果)
シモンソン氏とトヴェルスキー氏の研究(1992年)では、松竹梅のように3つの選択肢があると、両端を避けて真ん中を選ぶ人が増えることが示されています。一番安いものは「効かなそう」、一番高いものは「やりすぎ」と感じるためです。本命のコースを真ん中に置くのはこのためです。
3. 比べる相手がいると本命が選ばれる(おとり効果)
ダン・アリエリー氏の『予想どおりに不合理』で紹介された雑誌の購読実験では、「Web版59ドル」「印刷版125ドル」「Web+印刷版125ドル」の3つを並べると、84%がセット版を選びました。印刷版だけの選択肢を外すと、セット版を選ぶ人は32%に減りました。誰も選ばない選択肢でも、本命を引き立てる役割を持つということです。
整体院の客単価を上げるコース設計:3つの組み方を比較
コースの分け方は、主に「時間別」「悩み別」「回数別」の3つです。院の特徴や患者層によって合う形が違うので、下の表で比べてみてください。
| 組み方 | 例 | 向いている院 | 客単価への効き方 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 時間別 | 40分4,500円/60分6,500円/90分9,000円 | 一人院長・リラク寄りの整体院 | 長いコースへの移行で上がる。わかりやすい | 「時間を売る」印象になりやすく、施術の価値が伝わりにくい |
| 悩み別 | 腰痛ベーシック/骨盤+姿勢ケア/根本改善プレミアム | 症状の改善を打ち出す院 | 悩みに合わせた上位コースが選ばれやすい | コースが増えすぎやすい。3〜4個に絞る |
| 回数別(回数券) | 1回7,000円/5回32,000円/10回60,000円 | 通院の継続を前提にする院 | 1回あたりの単価は下がるが、前受けで売上が安定する | 割引率を上げすぎない。有効期限と返金ルールを明記する |
おすすめは、時間別か悩み別で3段階の土台を作り、回数券は2回目以降に案内する組み方です。初回から回数券の料金を見せると、「売り込まれるのでは」と構える患者さんが増えます。
3段階の価格の決め方
真ん中のコース(竹)を本命にし、いちばん安いコース(梅)は竹の7割前後、いちばん高いコース(松)は竹の1.4〜1.6倍を目安にします。たとえば竹が7,000円なら、梅は5,000円、松は10,000円です。梅と竹の差が小さいほど竹が選ばれやすく、松は「頼む人は少ないが、竹がお得に見える」位置づけになります。
整体院のメニュー設計で効くオプションの組み方
オプションは、客単価を上げるうえでいちばん手軽な方法です。ただし、付ければ何でも売れるわけではありません。付けてもらいやすいオプションには、共通する4つの条件があります。
- 価格は本メニューの20〜40%:7,000円のコースなら1,500〜2,800円。「ついでに」と思える金額です
- 追加の時間は10〜15分まで:時間が長いと予約枠が埋まり、他の予約を受けられなくなります
- 主訴に関係している:腰痛の人に「骨盤まわりの集中ケア」、デスクワークの人に「首・眼精疲労ケア」など、悩みに直結するもの
- 数は2〜3個まで:前述のジャムの実験のとおり、多すぎると選ばれなくなります
セルフケア指導の資料、テーピング、ストレッチ動画のLINE配信など、原価がほぼかからず満足度が上がるものもオプションに向いています。反対に、機器の購入が必要なオプションは、付帯率が見込めるまで導入を待つのが安全です。
料金の並べ方:同じメニューでも並べ方で選ばれ方が変わる
同じ3つのコースでも、並べ方で選ばれ方は変わります。料金表やWeb予約ページを作るときは、次の点を守ります。
- 高い順に並べる:最初に見た価格が基準になる「アンカー効果」で、2番目以降が手ごろに見えます
- 本命のコースに「一番人気」「初めての方におすすめ」の印を付ける:迷った人の背中を押します
- オプションはコースの直後に置く:会計時に口頭で勧めるより、選ぶ段階で目に入るほうが付けてもらいやすくなります
- 税込の総額で書く:2021年4月から、消費者向けの価格は税込の総額表示が義務になっています(消費税法第63条)
- コース内容は動詞で書く:「骨盤調整」ではなく「骨盤の傾きを測って整える」など、何をするのかが伝わる書き方にします
Web予約ページでも同じ順番に並べます。紙の料金表とWeb予約で並びが違うと、比べる基準がずれて、本命のコースが選ばれにくくなります。
メニューを見直す5ステップ
- 直近3ヶ月の数字を出す:コースごとの選ばれた割合、オプション付帯率、客単価を予約システムやレジのデータから集計します
- コースを3つに絞る:選ばれた割合が5%未満のコースは、廃止するか他のコースにまとめます
- 本命と価格を決める:いちばん勧めたいコースを真ん中に置き、梅は竹の7割、松は1.4〜1.6倍で価格を決めます
- オプションを2〜3個作る:主訴に関係し、10〜15分以内で終わり、本メニューの20〜40%の価格に収まるものを選びます
- 料金表とWeb予約を一緒に差し替え、1ヶ月後に数字を比べる:ステップ1と同じ指標で、変える前と後を比べます
一度に全部を変えると、何が効いたのか分からなくなります。最初の1ヶ月はコースの見直し、次の1ヶ月はオプションの追加というように、分けて変えるのがおすすめです。
メニュー設計の注意点:表示のルールを守る
客単価を上げる工夫でも、表示のルールに反すると信頼を失います。特に次の2つに注意してください。
二重価格表示:「通常10,000円→今だけ7,000円」のように比べる価格を書く場合、その通常価格で実際に販売していた期間が必要です。消費者庁の価格表示ガイドラインでは、比べる価格の直近8週間のうち過半の期間、その価格で販売していたことが目安とされています。販売実績のない「通常価格」は、景品表示法の有利誤認にあたるおそれがあります。
保険施術と自費オプションの区別:整骨院・接骨院で療養費の対象となる施術と自費オプションを組み合わせる場合は、どこからが自費なのかを料金表と会計の両方ではっきり分けて書きます。区別があいまいなままだと、患者さんとのトラブルや不正請求の疑いにつながります。
バディフルの支援事例
バディフルではこれまで500院以上の整体院・治療院の集客・経営をサポートしてきた中で、メニュー設計の見直しから相談が始まる院を数多く見てきました。支援先の院長が5観点(集客/オペ/コンテンツ/分析/チーム)で現状を分解すると、最初に手を打つ領域が30分で決まるケースが大半です。客単価が伸び悩む院では、多くの場合「コンテンツ」にあたる料金表と、「分析」にあたるコース別の集計に課題が見つかります。
関東の一人院長の整体院では、60分6,000円の1コースだけで運営していました。年間目標を月次の必要新規数までギャクサンすると、新規の獲得だけでは目標に届かず、客単価を1,000円以上上げる必要があることが数字ではっきりしました。外注施策と自助努力の役割分担も見える化され、広告は現状維持のまま、メニュー設計は院長自身が取り組むことにしました。
そこで、45分5,000円/75分7,500円/100分10,000円の3段階に組み直し、75分に「初めての方におすすめ」の印を付けました。さらに、主訴に合わせた2,000円のオプションを2つ追加し、Web予約ページの並びも料金表と同じにしました。その結果、3ヶ月で客単価は6,100円から7,300円に上がり(約20%増)、75分コースの選ばれた割合は52%、オプション付帯率は28%になりました。新規数は変えずに、月の売上は約22万円増えています。
スタッフ2名の整骨院では、自費オプションが6つあり、付帯率は8%でした。主訴に関係する3つに絞り、予約の段階で選べるようにしたところ、2ヶ月で付帯率は27%に上がりました。
よくある質問(FAQ)
- Q: コースを3段階にすると、安いコースばかり選ばれませんか?
- A: 梅と竹の価格差を小さくし、竹に「一番人気」の印を付けると、真ん中が選ばれやすくなります。支援先でも、竹が選ばれる割合は5割前後になることが多いです。梅は入り口、松は比べる基準と役割を分けて考えます。
- Q: オプションを勧めると押し売りだと思われませんか?
- A: 会計時に口頭で勧めるより、予約や問診の段階で患者さん自身が選べるようにすると、押し売りの印象は薄れます。主訴に関係するオプションだけに絞り、何が良くなるのかを一文で説明しておくのがコツです。
- Q: 既存の患者さんにも新しい料金を適用してよいですか?
- A: 改定の1〜2ヶ月前に院内掲示やLINEで知らせ、回数券の残りは旧料金のまま使えるようにするのが安全です。既存の患者さんは慣れたコースを選び続けることが多いので、新しい組み方は新規から先に適用すると混乱が少なくなります。
- Q: メニュー変更の効果はどのくらいで判断すればよいですか?
- A: 最低1ヶ月、来院数が少ない院なら2ヶ月は様子を見ます。比べる指標は、コースごとの選ばれた割合、オプション付帯率、客単価の3つです。季節による変動もあるので、前年同月とも比べると判断を誤りにくくなります。
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