整体院の値上げの伝え方|既存の患者さんを離さない告知時期と文面の例
この記事の目次(8項目)
整体院の値上げの伝え方は、告知時期と文面の準備で決まります。既存の患者さんを離さずに料金を改定する手順を、文面例つきで解説します。
- 値上げ告知は何ヶ月前に出すべきか(1・2・3ヶ月前の比較)
- 院内掲示・LINE・口頭でそのまま使える値上げ文面の例
- 回数券や定期通院の患者さんに離脱されない経過措置の作り方
- 値上げ前に済ませておく7つの準備手順
なぜ今、整体院でも値上げが避けられないのか
整体院の料金は、開業時に決めた価格のまま何年も据え置かれていることが少なくありません。しかし院の経費は確実に上がっています。総務省「消費者物価指数」によると、2024年平均の総合指数は前年比+2.7%でした。物価が3年続けて上がる中で施術料金だけを据え置くと、実質的には毎年値下げしているのと同じです。
人件費も上がっています。厚生労働省によると、2025年度の地域別最低賃金の全国加重平均は1,121円で、前年度から66円引き上げられました。受付スタッフを1名、月120時間雇っている院なら、時給66円の上昇だけで月約7,900円、年間で約9.5万円の負担増になります。これに家賃・光熱費・タオルやシーツのリネン代・予約システムなどの固定費の上昇が重なります。
値上げそのものは経営上必要な判断です。問題は「上げること」ではなく「どう伝えるか」です。伝え方を誤ると、価格差よりも「黙って上げられた」「急に言われた」という不信感で患者さんが離れます。
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値上げ後に通院をやめる患者さんの多くは、金額そのものより、次のような伝え方の問題に反応しています。
1. 告知が直前すぎる
改定の1〜2週間前に掲示を出すだけでは、患者さんは「次回から急に高くなる」と受け取ります。特に月2〜4回通っている方は家計の中で予算を組んでいるため、準備期間がないと通院回数を減らすか、やめるかの判断になりやすくなります。
2. 理由が書かれていない
「料金改定のお知らせ」と新価格だけを書いた掲示は、患者さんに「儲けたいだけでは」と思わせます。物価・人件費・設備維持など、具体的な理由を短く添えるだけで受け止め方は大きく変わります。
3. 既存の患者さんへの配慮がない
長く通ってくれている方や、回数券を購入済みの方が新規の方と同じ扱いになると「今まで通ってきたのに」という感情が生まれます。値上げは新規の方と既存の方で影響が違うため、既存の方向けの経過措置を用意することが重要です。
値上げ告知の時期を比較|1ヶ月前・2ヶ月前・3ヶ月前
告知時期は早すぎても遅すぎても効果が下がります。通院間隔と回数券の消化期間を基準に考えると判断しやすくなります。
| 告知時期 | メリット | デメリット | 向いている院 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月前 | 準備が短くて済む。駆け込みの回数券購入が集中しにくい | 月1回通院の方は告知を1回しか目にしない可能性がある。不意打ち感が出やすい | 値上げ幅が5%未満の小幅改定、通院間隔が週1回前後の院 |
| 2ヶ月前(推奨) | 月1回通院の方でも2回以上告知に触れられる。口頭で直接説明する機会を確保できる | 告知から改定までの間に回数券の駆け込み購入が増える | 多くの整体院。値上げ幅が5〜15%の一般的な改定 |
| 3ヶ月前 | 不満の声を拾って経過措置を調整する余裕がある。長期通院の方への配慮が伝わる | 告知が日常化して印象が薄れる。改定直前に再告知が必要 | 値上げ幅が15%を超える院、メニュー体系ごと見直す院 |
月1回ペースのメンテナンス通院が中心の院では、2ヶ月前の告知で「告知を見る→次回来院時に口頭で説明を受ける」という2段階を作れます。これが既存の患者さんに納得してもらう最低限の接点になります。
整体院の値上げを進める7つの手順
告知文を書く前に、次の順番で準備を進めます。チェックリストとしても使えます。
- 現在の原価と粗利を出す:家賃・人件費・消耗品・システム費を施術1回あたりに割り戻し、現在の料金で利益がいくら残っているかを数字で確認します。
- 値上げ幅を決める:経費上昇分を補える金額を出したうえで、近隣の同業院の価格帯と比べます。一度に大きく上げるより、5〜10%程度に抑えるほうが離脱は起きにくくなります。
- 経過措置を決める:回数券の旧価格維持期間、既存の患者さん向けの据え置き期間、改定前の回数券購入の可否を決めます。
- 改定日と告知日を決める:改定日から逆算して約2ヶ月前を告知開始日にします。月初の改定にすると患者さんが覚えやすくなります。
- 告知文と口頭トークを用意する:院内掲示・LINE・ホームページ・口頭の4種類を同じ内容で作り、スタッフ間で説明がぶれないようにします。
- スタッフで想定問答を共有する:「なぜ上がるの?」「回数券はどうなる?」などの質問への答え方を事前にそろえます。
- 改定後3ヶ月の数字を追う:既存の患者さんの来院数・再来率・回数券購入数を改定前と比べ、離脱が想定以上なら経過措置の延長を検討します。
そのまま使える値上げ文面の例
文面は「感謝→理由→新料金と改定日→経過措置→問い合わせ先」の順にすると、短くても誠実さが伝わります。
院内掲示・ホームページ用の文面例
「いつも当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。このたび、物価や光熱費、施術環境の維持にかかる費用の上昇を受け、〇年〇月〇日より施術料金を改定させていただくことになりました。開院以来、できる限り料金を据え置いてまいりましたが、施術の質と清潔な環境を守り続けるための判断です。改定前にご購入いただいた回数券は、有効期限まで現行料金のままご利用いただけます。ご不明な点はお気軽にスタッフまでお声がけください。」
LINE配信用の文面例
「〇〇整体院です。いつもご来院ありがとうございます。〇月〇日より施術料金を改定いたします(60分コース:6,000円→6,500円)。物価や施術環境の維持費の上昇によるもので、開院〇年目で初めての改定となります。〇月末までに購入された回数券は、期限まで現在の料金でご利用いただけます。詳しくは次回ご来院時にご説明いたします。」
LINEは金額を具体的に書くことが大切です。金額を伏せると「どれくらい上がるのか」という不安から問い合わせや予約控えが増えます。
施術中・会計時の口頭トーク例
「〇〇さん、少しだけお知らせがあります。〇月から料金を500円上げさせていただくことになりました。開院以来初めての改定で、悩んだんですが、これからも同じ時間をかけて丁寧に施術を続けるために決めました。〇〇さんが今お持ちの回数券は最後まで今の料金で使えますので、安心してください。」
口頭では、まず個人名を呼んで、本人にとって何が変わり何が変わらないかを先に伝えます。理由の説明は短くまとめ、言い訳のように長く話さないことがポイントです。
長期通院の患者さんへの個別メッセージ例
「〇〇さん、いつも長く通っていただきありがとうございます。〇月から料金改定をいたしますが、〇年以上通ってくださっている方には〇月末まで現在の料金で施術させていただきます。これからもよろしくお願いいたします。」
値上げ幅と経過措置の決め方
経過措置は「誰に・いつまで・何を据え置くか」を明確にします。代表的な3つの方法を比較します。
| 経過措置 | 内容 | 離脱防止の効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 回数券の旧価格維持 | 改定前に購入した回数券は期限まで旧価格で利用可 | 高い。回数券の駆け込み購入で一時的に前受金が増える | 購入上限を設けないと改定後の売上が数ヶ月伸びない |
| 既存の患者さんの据え置き期間 | 一定期間(1〜3ヶ月)既存の方は旧価格 | 中〜高。長期通院の方の不満を抑えやすい | 対象者の管理が必要。予約システムでのタグ付けが有効 |
| 新メニュー追加型 | 旧料金のメニューは時間を短くして残し、新料金の標準コースを追加 | 中。患者さんに選択肢を残せる | メニューが複雑になりすぎないよう3種類程度に抑える |
回数券の駆け込み購入は、改定前の2ヶ月で売上が一時的に増える一方、改定後に回数券の消化が続くため新料金の売上が立ちにくくなります。購入上限を「お一人様1冊まで」などと決めておくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
バディフルの支援事例
バディフルではこれまで500院以上の整体院・治療院の集客・経営をサポートしてきた中で、値上げを含む料金見直しの相談も多く受けてきました。料金改定の相談でまず行うのは、値上げ幅を決める前に院の現状を分解することです。支援先の院長が5観点(集客/オペ/コンテンツ/分析/チーム)で現状を分解すると、最初に手を打つ領域が30分で決まるケースが大半です。値上げの相談で来た院でも、実際には「再来率が下がっていて、値上げの前に通院の仕組みを整えるべき」と判断が変わることがあります。
ある郊外の整体院(院長1名・スタッフ1名)では、60分コースを5,500円から6,000円(約9%)に改定しました。改定の2ヶ月前から院内掲示とLINEで告知し、施術中に一人ずつ口頭で説明しました。回数券は改定前購入分を旧価格で維持し、購入は1人1冊までとしました。その結果、改定後3ヶ月の既存の患者さんの来院数は改定前比で約97%を維持し、月の売上は約7%増えました。
また、値上げ幅を決める際には、年間目標を月次の必要新規数までギャクサンする方法を使っています。年間目標を月次の必要新規数までギャクサンすると、外注施策と自助努力の役割分担が数字で見える化されます。「値上げで単価を上げれば、必要な新規数は月何人減るのか」「その分を広告費に回すのか、口コミや紹介で補うのか」を数字で判断できるため、値上げを感覚ではなく経営計画の一部として位置づけられます。
よくある質問(FAQ)
- Q: 値上げを伝えると患者さんはどれくらい離れますか?
- A: 値上げ幅が10%前後で、2ヶ月前から理由と経過措置を伝えた場合、既存の患者さんの離脱はごく一部にとどまることが多いです。離脱の主な原因は金額より告知の遅さや説明不足なので、伝え方の準備を優先しましょう。
- Q: 回数券を持っている患者さんにはどう対応すべきですか?
- A: 改定前に購入した回数券は、有効期限まで旧価格で利用できるようにするのが基本です。駆け込み購入が集中すると改定後の売上が伸びにくくなるため、「お一人様1冊まで」など購入上限を決めておくと安心です。
- Q: 値上げの理由はどこまで具体的に書くべきですか?
- A: 物価・光熱費・人件費・施術環境の維持など、患者さんが納得しやすい理由を1〜2文で伝えれば十分です。細かな経費の内訳まで書くと言い訳がましく見えるため、口頭で聞かれたときに補足する程度にとどめましょう。
- Q: 新規の方と既存の方で料金を分けてもよいですか?
- A: 一定期間、既存の方だけ旧料金を据え置く方法は有効です。ただし期限を決めずに続けると料金体系が複雑になり、管理の手間が増えます。据え置きは1〜3ヶ月など期限を決め、予約システムで対象者を管理すると運用しやすくなります。
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