インボイス2割特例が終わったあと、整体院の消費税はどうする?簡易課税と本則課税の選び方
この記事の目次(8項目)
整体院のインボイス2割特例は、個人事業者なら2026年分で終わります。2027年分から納める消費税が変わるため、簡易課税と本則課税のどちらを選ぶかを試算と手順で説明します。
- インボイス2割特例が終わる時期と、個人事業者向けの経過措置(3割特例)
- 年商1,100万円の整体院で比べた、2割特例・簡易課税・本則課税の納税額
- 簡易課税と本則課税を選ぶ4ステップと、届出の期限
- 施術と物販の売上を分けて、簡易課税の納税額を抑える方法
整体院のインボイス2割特例終了で何が変わるか
2割特例は、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった方の負担を軽くする経過措置です。売上にかかる消費税額の20%を納めればよく、経費の集計がいらないため、多くの一人院長が使ってきました。
2割特例の対象期間
国税庁によると、対象は「2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間」です。個人事業者は2023年分(10〜12月)から2026年分までが対象で、2027年分(2028年3月に申告)から使えなくなります。3月決算の法人は、2027年3月期が最後です。
個人事業者には「3割特例」の経過措置
令和8年度税制改正で、2割特例を使っていた個人事業者は、2027年分と2028年分に限り、売上にかかる消費税額の30%を納める「3割特例」を選べるようになりました。それでも負担は2割特例の1.5倍になり、2029年分からは簡易課税か本則課税のどちらかを選ぶことになります。適用の条件は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁のサイトか顧問税理士に確認してください。
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2割特例が終わったあとの計算方法は、主に次の2つです。整体・リラクゼーションの施術はサービス業なので、簡易課税では第5種事業(みなし仕入率50%)になります。
| 項目 | 簡易課税 | 本則課税(一般課税) |
|---|---|---|
| 納税額の計算 | 売上の消費税 ×(1 − みなし仕入率) | 売上の消費税 − 実際に支払った仕入の消費税 |
| 整体院の施術 | 第5種:みなし仕入率50% | 実際の経費しだい |
| 物販(サプリ・枕など) | 第2種(消費者向けの小売):80% | 実際の仕入額しだい |
| 使える条件 | 2年前の課税売上高が5,000万円以下 | 条件なし |
| インボイスの保存 | 仕入側では不要 | 仕入税額控除に必要 |
| 還付 | 受けられない | 設備投資で赤字なら受けられる |
| 事務の手間 | 少ない | 多い(請求書の確認と保存) |
注意点として、人件費(給与)は課税仕入になりません。スタッフを雇っていて経費の多くが給与の院では、本則課税で差し引ける消費税が思ったほど増えません。
年商1,100万円の整体院で納税額を試算
税込売上1,100万円(税抜1,000万円・消費税100万円)の一人院で試算します。家賃・広告費・消耗品・水道光熱費などの課税仕入は税抜300万円(消費税30万円)とします。わかりやすくするため、国税と地方税を分けずに計算しています。
| 計算方法 | 計算式 | 年間の納税額 | 使える時期 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 100万円 × 20% | 20万円 | 個人は2026年分まで |
| 3割特例 | 100万円 × 30% | 30万円 | 個人は2027・2028年分 |
| 簡易課税(第5種) | 100万円 ×(1 − 50%) | 50万円 | 届出をすれば使える |
| 本則課税 | 100万円 − 30万円 | 70万円 | 届出なしの場合 |
| 本則課税(改装で税抜800万円を投資した年) | 100万円 − 110万円 | 10万円の還付 | 届出なしの場合 |
2割特例から簡易課税に切り替えると、この院では年30万円、月にして2.5万円の負担増です。いっぽう本則課税のままだと年50万円増えます。課税仕入が売上の50%を下回る院では、ほとんどの場合、簡易課税のほうが納税額が少なくなります。
簡易課税と本則課税の選び方|判断の4ステップ
- 2年前の課税売上高を確認する:5,000万円を超えていれば簡易課税は使えません。整骨院の保険施術(療養費)は非課税なので、課税売上には含めません。
- 直近1年の課税仕入を集計する:家賃・広告・消耗品・リース料・業務委託料などの税抜額を合計します。給与・社会保険料・保険料は含めません。
- 課税仕入が売上の何%かを見る:50%未満なら簡易課税が有利、50%以上なら本則課税が有利になりやすいです。物販が多い院は、事業区分ごとに試算します。
- 2〜3年先の設備投資の予定を確認する:開業、移転、改装、高額機器の購入を予定している年は、本則課税で還付を受けられることがあります。簡易課税は一度選ぶと2年間やめられないため、投資の時期と合わせて決めます。
簡易課税で損しないための売上区分(施術と物販)
簡易課税では、2種類以上の事業をしていても売上を区分していなければ、すべての売上に一番低いみなし仕入率が使われます。施術(50%)と物販(80%)を分けずに記帳すると、物販の売上まで50%で計算されてしまいます。
レジや予約システムで、メニューを「施術」「物販」「回数券」に分けて記録しておけば、月ごとの事業区分の集計がそのまま申告に使えます。回数券は、施術を受けた月ではなく販売した時点の売上として扱うのが一般的です。計上時期は院のルールに合わせて税理士と決めておくと、集計がぶれません。
届出の期限チェックリスト
- □ 個人で2割特例を使った院は、2027年中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を出せば、2027年分から簡易課税を使えます(2割特例を使った人向けの特例)
- □ 通常は、簡易課税を使いたい年の前年末(法人は前の事業年度末)までに届け出ます
- □ 簡易課税をやめるときは、やめたい年の前年末までに「不適用届出書」を出します。ただし最低2年間は続ける必要があります
- □ 3割特例は届出がいらず、申告書に書けば使えます
- □ 物販や回数券など、事業区分ごとの売上集計が月単位で出せるか確認します
バディフルの支援事例
バディフルではこれまで500院以上の整体院・治療院の集客・経営をサポートしてきた中で、インボイス登録後に「売上の内訳がわからず、税理士に試算を頼めない」という相談を何度も受けてきました。原因でよく見つかるのは、予約の窓口がばらばらになっていることです。たとえば、院長個人用・院用・旧店舗用の複数のLINE公式アカウントが混在していて、集客の動線も予約の記録も分かれているケースを、この半年で複数見てきました。
ある一人院(税込年商約1,320万円)では、予約の窓口をバディフルの予約システムに一本化し、メニューを施術・物販・回数券に分けて登録しました。3ヶ月分のデータを税理士に渡したところ、物販が年約150万円(税抜)あることがわかりました。全額を第5種で計算すると60万円だった試算が、物販を第2種に分けると55.5万円になり、年4.5万円の差が出ました。月末の集計にかかる時間も、約3時間から30分ほどに減りました。
よくある質問(FAQ)
- Q: 2割特例が終わったら、何もしなくても簡易課税になりますか?
- A: なりません。届出をしなければ本則課税で計算します。個人で2割特例を使っていた院は、2027年中に簡易課税制度選択届出書を出せば2027年分から使えます。3割特例を使う場合も、2029年分からに備えて早めに決めておくと安心です。
- Q: 整骨院の保険施術は、消費税の計算に入りますか?
- A: 柔道整復の療養費の対象となる保険施術は非課税なので、課税売上に含めません。自費メニューや物販だけが課税売上です。保険の割合が高い整骨院は課税売上が1,000万円を下回ることもあるため、まずは区分して集計してください。
- Q: インボイス登録をやめて免税事業者に戻るのはありですか?
- A: 患者さんの多くが個人なら、登録をやめても影響は小さいことがあります。ただ、法人提携や福利厚生の契約先はインボイスを求めることが多いです。取引先の構成を確認し、登録をやめる届出の期限も含めて税理士と判断しましょう。
- Q: 開業してすぐ改装予定です。簡易課税と本則課税、どちらが良いですか?
- A: 内装工事や機器購入で課税仕入が売上を上回る年は、本則課税なら還付を受けられることがあります。簡易課税は2年間やめられないため、投資の年は本則課税、そのあと簡易課税に切り替えるといった順番を事前に組み立てましょう。
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